有機栽培コーヒー豆を丁寧にハンドピック&自家焙煎し奄美をイメージしたオリジナルブレンドや、お好みに合わせたブレンド作りをしています。

南海041118

●奄美の将来像を考えるー3●
南海日日新聞2004年11月18日

●南の島へのIターンと老後の暮らし
 観光情報としての記事にステレオタイプの要素が欠かせないのは、読者のアイキャッチをひくために仕方がないとしても、たとえば島に農業でIターンした人を取り上げる場合も、同じような色合いで語られていないだろうか。また、家賃が安く、島の人たちがいろいろと助けてくれるから退職後に暮らしやすい、というような情報も増えているようだ。
 しかし、私が奄美大島で見聞した限り、農業でのIターンは非常に厳しく、歳をとってから初めて暮らす場としてふさわしいかどうかは大いに疑問がある。

●厳しい農業でのIターン
 南の島での農業は、明るい太陽の下で自然を感じながらのんびりできるものではない。台風の通り道となる南西諸島では、台風によって畑が壊滅的な打撃を受けることもあり、塩害によって数年間にわたって畑や果樹に影響が出ることもある。さらに高温多湿な気候は、雑草や病害虫の繁殖を盛んにする。
 農業だけで生計を立てようとするなら、島内消費分だけでは無理だろう。ことに南西諸島の特産品であるトロピカルフルーツを手掛けるなら、全国で通用する産地として確立しなくては、海外からの安価な商品を入手できる市場を相手にして生き残ってはいけない。そのためには商品としてのレベルの向上と均一化、安定した収量の確保ができるような技術指導が不可欠だ。さらに、奄美特産のくだものの保護、育成もたいせつだ。

加計呂麻の空き家
空き家は多いが、Iターン者受け入れの環境は整っているだろうか

 Iターンの場合、最低3年は暮らせるだけの資力を持っていないと、農業だけで生活していくことはできない。先だって、住用村の村長に就任した師玉氏が目指す農業振興は、「年間180〜200万円の所得が得られる農家の育成」である、とその就任の記事で見た。この数字は住用村に限ったことではない。「奄美で、農業だけで年間200万円の所得がある農家は数えるほど。所得であって、収入ではない点に注意してもらいたい」とあるJA職員に聞いたこともある。
 島なら、それで生活ができるのだろうか。自家消費野菜を自分で作り、あるいは近所の人と交換したり、魚は自分でとってくるようにすれば、コメと肉だけ買えば食費はかなり抑えられるという。だが、この所得から国民健康保険や国民年金、医療費、子どもの教育費、被服費が出せるのか。Iターン者のために行政が家賃補助などさまざまな援助を行っているとは言え、最初からそれを当てにし、甘んじていて良いのだろうか。そのためにも、蓄えは必要だろう。
 10年ほど前に、徳之島の果樹農家に1ヵ月ほどホームステイしたが、自分がその厳しい環境ではじめて農業に取り組みながら暮らしていくことに、どうしても自信が持てなかった。名瀬市なら農業以外の職場も多いように感じたが、その名瀬市の2004年3月現在の生活保護率は59‰を越えている(02年度の全国平均の保護率は9.8‰)。何度かの奄美滞在を通して知人は多少なり増えてきているとは言え、私は依然として、奄美で自活する自信を持てずにいる。

●過疎高齢化のシマに退職者はIターンできるのか
 では、退職後に家賃の安い家を借りて暮らすことは現実的だろうか。退職後にIターンをした場合、まず問題になるのは食料品をどう確保するか、だろう。島の物価は、流通コストがかかるため、本土の都会よりも割高になる。ガソリン代も高い。医療施設がある程度整っていなくては、高齢が目前の人たちには不安がある。言葉や習慣の違いもある。さらに本土とは比較にならない勢力をもった台風の常襲地である。南の島=温かい、という先入観があるが、冬の北風はかなり冷たい。過疎高齢化になる場所は、そうなるだけの理由がある。そこをきちんと考えておかないと、「こんなはずでは…」になってしまうだろう。
 東京・大阪から奄美大島への直行便があることもまだ認知度が低いが、東京ー奄美大島片道の正規料金が3万9800円と知ると、一様に驚く。「往復の航空券だけで8万円出すなら、海外へ行った方が安い」と言う人もあれば、「でも、それだけの費用をかけても行くだけの魅力があるんでしょうね」と言う人もいる。もちろん格安のツアーも多いが、直行便のある奄美大島でさえ、航空運賃の問題は大きい。自ら選んで旅行で訪れる人は、それを問題としないかもしれないが、島に住んでいる人にとって、内地の親戚に不幸があった場合や、子どもの結婚式で内地へ行かなくてはならない場合などの負担は大変だ。
 私は毎回、必死に安いチケットを探して友人宅に泊めてもらうという厚意に甘えているが、そういう事情を知らない人は「そのうち、島に住んじゃえば」と茶化してくる。もちろん、その希望がないわけではないが、「内地に住んでいる親が亡くなったら、4人家族で往復交通費だけで30万円以上。そういう所に、あなたは住みたい?」と逆に質問すると皆、一様に黙り込む。
 こんな厳しい条件の中でも、Iターン後に島を離れない理由は何か。
 島の魅力は、そこにある。厳しさを越えるだけの魅力。語るべきはそこにあるのではないだろうか。

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